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自己修復塗料とは?

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トクシキは分配・配合・合成の3つの基盤技術をもとに、長い時間をかけて培ってきた経験を提供しています。 ぜひ、製品に関するカタログをダウンロードください。

日常生活で家電製品を使用する際、または、生産、運送、搬入時に発生する問題として「擦り傷」があります。ハードコートを施した商品を多く目にしますが、使用しているうちに細かな傷が入ってしまい、画像が見えにくくなること、光沢が損なわれてしまうことがしばしば起こってしまいます。近年、自己修復塗料は、ハードコートとは異なる擦り傷防止のコート剤として注目を浴びています。当社では、数年前から自己修復塗料の開発をおこなっており、以下に製品の技術と特徴を紹介します。

目次
1.自己修復塗料のメカニズムと設計
2.製品紹介
3.用途事例

1.自己修復塗料のメカニズムと設計

自己修復塗料とは、「塗膜表面上についた傷が、時間変化に伴い自己の力で元に戻る性質を有する塗膜を形成する塗料」のことです。当社の自己修復塗料は、真鍮ブラシによって塗膜面につけられた傷が瞬時に消えます。この時、塗膜面についた様に見える傷は、弾性膜の凹みになります。塗膜内に分散した応力は、弾性エネルギーに変換され復元力で元の状態に戻ります。この塗膜の弾性回復が、自己修復現象を起こしていると考えられています。
自己修復メカニズム
図1 自己修復のメカニズム

 従来のハードコートは、硬さと滑性により傷の抑制を行っています。これに対し自己修復塗料は、ゴム様の弾性と滑性により傷の抑制を行っています。
 当社では、樹脂合成技術、配合技術、分散技術の3つのコア技術を活用し機能性塗料の一端として自己修復塗料の開発を行ってきました。
 自己修復塗料は、ウレタン樹脂をベースに構成されています。修復性能は、塗膜の弾性回復性がポイントとなるため、当社でそれに適したウレタン樹脂を設計しています。
 塗膜の硬化は、UV(紫外線)もしくは熱によりおこなわれます。この時、ウレタン樹脂の架橋点は、均一な3次元架橋を作るように多官能化する設計にしています。ウレタン樹脂は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等のポリオールとイソシアネートから構成されます。ポリオールの種類によって修復性能に差が出るため、ポリオールの最適化と2~3官能の材料の組み合わせにより合成されます。
 また、樹脂の分子量も重要です。分子量が大きいと弾性力は増しますが、粘度が高くなり、塗料に適さなくなります。逆に低いと弾性がなくなり、修復性能が落ちます。そのため適度な分子量の調整が必要となります。これらを考慮する事で、通常のオリゴマーと比較して靭性に優れ「こしの強い」ウレタン樹脂が得られます。さらに耐久性等も求められることから、構造の異なるウレタン樹脂を数種類組み合わせて全体のバランスを調整しています。
塗料組成は、ベース樹脂の弾性を保持しつつ、モノマー等を用いて修復性を示す塗膜の硬さの調整を行います。修復速度は、塗膜の硬さに依存し、25℃で5秒~10分程度が望ましい。塗膜が軟らかいと修復速度は早くなるが、タック性が強くなり、フィルムの巻き取り工程で不具合が生じます。逆に硬いと鉛筆硬度やタック性は向上するが、修復速度が遅くなり、ある硬さ以上になると傷が修復しなくなります。
 必要に応じてシリカ等のフィラーを使用することで、艶消し、耐擦傷性のある自己修復塗料も作成出来ます。選択する材料によって粒子径の大きさ、塗料の安定性、修復速度が変化する場合があるので注意が必要となります。
 塗膜の厚さも修復性に影響を及ぼします。通常のハードコートが5~10μm程度の厚さであるのに対し、自己修復塗料の推奨膜厚は、15~30μmとなります。塗膜が厚い程、弾性力は強くなるため、傷の修復性が出やすくなります。厚膜でも硬化収縮が少ないため、フィルムのカールを気にする必要がありません。10μm以下では修復性が確認できず、塗膜面が破断された場合にも傷は修復しません。特性を十分引き出すためには適度な膜厚が必要となります。また、塗膜を形成する際、硬化が不十分であると特性にバラツキが出てしまいます。UV(紫外線)硬化の場合、高圧水銀灯1灯で500mJ/cm2以上の積算光量が必要となります。

2.製品紹介

 当社の自己修復塗料は、UV(紫外線)硬化型塗料6グレード、熱硬化(二液硬化)型塗料2グレードを提案しています。各製品グレード及び特長について表1に、各グレードの塗料物性について表2にまとめました。

表1 自己修復塗料グレード一覧
品名 硬化方式 特長
AUP-727 UV(紫外線)硬化      修復性に優れた標準品。伸張性も2倍以上!
AUP-828 乾燥工程不要の無溶剤タイプ。フィルム塗工に最適。
AUP-838C 汚染防止付与タイプ。油性マジックを弾きます。
AUP-849 修復速度、硬さ、伸びのバランスが取れた滑性付与タイプ。
AUP-1410 耐スチールウール性に特化した耐磨耗タイプ
AUP-848M 指紋が見えにくいマット(艶消し)タイプ。
AUP-818 熱硬化(2液)  耐光性、耐溶剤性に優れたタイプ。
AUP-1250 金属密着性に優れたタイプ。
AD-1300 プライマー 金属、ガラス、アクリル基材と密着するアクリル系タイプ。

表2 自己修復塗料物性
品名 AUP-727 AUP-828
無溶剤
AUP-838C
汚染防止
AUP-1410
耐磨耗
AUP-849 AUP-848M
マット
AUP-818 AUP-1250
硬化方式 UV(紫外線)硬化 熱硬化
樹脂系 ウレタン系
外観 淡黄色透明
液体
淡黄色透明
液体
淡黄色透明
液体
淡黄色白濁
液体
淡黄色透明
液体
淡黄色白濁
液体
淡黄色透明
液体
淡黄色透明
液体
粘度
mPa・s/25℃
200~600 300~600 10~50 10~50 20~60 100~500 400~1,000 20~50
固形分(%) 30 100 50 40 40 44 50 50
溶剤組成 MEK - MEK 酢酸ブチル MEK、MIBK、
1-メトキシ-2-プロパノール
MEK、酢酸ブチル



UV(紫外線)硬化型塗料は、修復性、伸張性に優れたAUP-727、乾燥工程が不要な無溶剤タイプのAUP-828、油性マジックを弾く汚染防止タイプのAUP-838C、バランスタイプのAUP-849、耐スチールウール性に特化した耐磨耗タイプのAUP-1410、指紋が見えにくいマットタイプのAUP-848Mがあります。
 熱硬化型塗料は、耐光性、耐溶剤性に優れたタイプのAUP-818、アルミ、ステンレス、鉄、ブリキなどの各種基材に金属基材に優れたタイプのAUP-1250があります。
アクリル、金属、ガラスなど密着しにくい基材には、自己修復塗料専用プライマーのAD-1300を使用する事で密着可能となります。
 上記以外にもユーザーの要求物性に応じてカスタマイズを行っています。修復性の速度調整や伸び性の調整、表面滑性の付与、艶消し、耐汚染性、帯電防止性、抗菌性など機能性付与、塗工方法に応じて、溶剤種の変更や塗料粘度の調整などの対応も行っております。
各グレードの修復速度や塗膜の硬さについて図2にまとめました。
自己修復
図2 各グレードの塗膜の硬さと修復速度の関係

3. 自己修復塗料の用途事例

 自己修復塗料は、ディスプレイ用保護フィルムやスマートフォン用筐体、ケース、車輌用保護フィルムなど、傷の付きやすい個所に採用されています。しかし、想定した以外の用途に使用される事もあり、その開発事例の一部を紹介します。

(1)割れないトップコート
 スマートフォン用のアクセサリーメーカーでは、自己修復塗料のもつ柔軟性に対して、傷の修復よりも割れないことに着目しました。ハードコートを施工したプラスチックケースにおいて、エンドユーザーでケースを取り外す際や製品を曲げた時、ケースが割れる場合があります。これにより年間数%のクレームが発生していたが、ハードコートの代わりに自己修復塗料を「割れないトップコート」として採用した結果、クレーム率が大幅に減少しました。

(2)工程上の歩留まりの改善
 あるメーカーでは、製品を組み立てる際に、部品に傷がついてしまうため、保護フィルムを使用していました。この保護フィルムを剥がす際に使用していた糊が部品に残り不具合が出ること、保護フィルムを使用するとコストアップにつながることから、保護フィルムの代わりに自己修復塗料を部品に塗布しました。結果、保護フィルムでカバーできない形状部分の傷防止や、糊残りも気にしなくて済む様になりました。

 傷の問題は、どの製造業においても、不良率のアップにつながるため大きな課題として挙げられています。自己修復塗料の傷がつかない、つきにくいといった観点は、ハードコートと異なる考え方として世の中に浸透しつつあります。しかしながら、耐久性や性能などが不足しており、ハードコートに取って代わる存在になるまでに至っておりません。当社でも課題のブラッシュアップを図り、従来のハードコートと異なる新たな用途展開を進めていく方針です。

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